レポート「SNSと学校教育」(第12回地域SNS全国フォーラムin安城分科会)

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去る2月16日に行われた「第12回地域SNS全国フォーラムin安城」の中で「SNSと学校教育」をテーマに第1分科会が開催されました。この分科会のコーディネーターを地域SNS研究会事務局の庄司昌彦が担当しました。
この分科会は「SNSでの人間関係」や「SNSを通じた社会との関わり方」について調査・学習を行った中学生たちにその成果を発表してもらい、それを元に皆でディスカッションを行うというものです。当日は、愛知教育大学附属岡崎中学校3年C組の皆さんが調査した成果を元に発表を行いました。
C組では様々な専門家に取材を行うだけではなく、クラス全員がFacebook上にアカウントを作成し、実際に自分たちがSNSを利用しながら、SNSのメリット・デメリット、今ある問題点、新たな活用方法などについて調査を行いました。さらに、調査を進める上での話し合いを、Facebookのグループ機能を活用し授業時間外でも積極的に行ったといいます。
■調査のきっかけ

今回SNSについて調査を行うことになったきっかけは、2012年に開催されたロンドン五輪でのSNSの積極的な利用にあるそうです。
ロンドン五輪では、ある選手が人種差別発言をツイッター上で行ったために五輪出場停止になるという事件が起きました。このようにSNSは、人間関係にまつわるトラブルが起きやすいというデメリットを抱えており、SNSへ書き込むことで、いじめ、個人情報流出、社会問題などに発展するのではという不安も伴って、C組の皆さんのSNSに対する印象は当初あまり良く無かったといいます。
しかし、選手に対する応援コメントが投稿されたり、選手自身が心境を綴ったりするなど、ロンドン五輪ではSNSのポジティブな使われ方もよく見られました。このようなSNSの裏表を知った上で、C組の皆さんは、未来に向けてSNSを良い方向にもっと上手く活用していくべきだと考え、実際の活用例について調べを進めていきました。

■SNSのシステムに関するメリット
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最初に、SNSのシステムに関するメリットについて報告が行われました。まず紹介されたのは、SNSの匿名と実名についてです。匿名の利点として、実名よりも気軽に交流することが可能であったり、悩みなど話ににくいことを気軽に話せたりすることが挙げられます。また、「名前」ではなく「話題」で新たな人間関係が構築されることも匿名の利点ではないかとのことでした。
他方、実名では名前で個人が特定できるため安心感があることがメリットです。さらに実名の場合には、家族や友人たちとコミュニケーションを行うこともできます。他にも、スポーツ選手や芸能人などの書き込みを閲覧できるというのも実名制のSNSならではの利点だと述べられました。
次に、SNSの公的な利用についても言及がなされました。最近では、SNS上で企業が自社の宣伝を行ったり、自治体や政治家が観光や政策についての広報の場としてSNSを利用したりする事例が出てきているとのことでした。
■地域SNSについて

続いて地域SNSに関する報告が行われました。地域SNSで一番重要なことは「運営方法」だとC組の皆さんは主張します。例えば、安城市の地域SNS「あんみつ」では、利用者の自主性を生かした運営が行われています。安城市は歴史的・地理的に自主性の強い人材が多いと言われており、そうした人々がSNS管理者と共同で「あんみつ」の運営を行なっているというのです。
地域SNSには、グローバルSNSと比較をしたときに独自の特徴があることも説明されました。「あんみつ」ではTOPページに地域の天気や市営博物館の宣伝が掲載されていたり、千葉県山武市の「山武SNS」では東京電力の発電量や防災情報が見られるようになっていたりというように、ユーザーである地域住民が必要とする機能が実装されているのです。
その他の地域SNSの長所として「安心感」が挙げられました。グローバルSNSでは、利用者の情報や書き込みがビジネスや政治に勝手に利用される恐れがありますが、自治体や公共機関が運営していることの多い地域SNSではその心配がほとんど無いのです。
以上のように地域SNSの長所が紹介されましたが、同時に地域SNSの持つ短所についても指摘がなされました。まず。挙げられたのは利用者が少ないということです。その為に書き込みの内容によっては個人が特定されてしまう可能性もあります。さらに、自治体や公共機関が運営していることが多いため内容が真面目な硬いものになりがちです。ただし、この点は人によっては安心性や安全性と捉えられるかもしれません。
最後に、地域SNSの未来はどうあるべきかについて述べられました。使用目的によって地域SNSとグローバルSNSの使い分けをすることが重要だとした上で、現状では知名度、利用者、総数ともに少ない地域SNSの規模を、今後は拡大していく必要があるのではないかという提案がなされました。
■趣味に活用されるSNS
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SNSは、趣味においても現実では実現できない、人との新しい繋がり方を提供します。例えば、現実社会で身の回りに同じ趣味を持つ人がいなくとも、SNSを利用することで同じ趣味の人と繋がることが可能です。もし、それが地域SNSであれば同じ地域に共通の趣味を持った人がいることが分かるため、現実世界での交流に繋がることも期待されます。
さらに、Facebookの「シェア」やTwitterの「リツイート」など、情報拡散機能を備えたSNSでは、共通の話題について最新の情報を交換することができるため、情報収集の場としても最適と言えるでしょう。さらに現実世界にある「壁」が取り払われ、年齢・性別・国境を超えた関わりが実現できる環境はSNS以外には無いのではないかという分析が行われました。
こうした趣味の領域でSNSを活用するためには、SNSの「気軽につきあえる特性」「相手を見つけやすい特性」「社会性を構築できる特性」の3点が関係してくるといいます。「気軽につきあえる特性」は、現実世界に存在する様々な「壁」を超えるというもので、ハンドルネームを利用できるTwitterや2ちゃんねるなどの匿名掲示板で顕著です。「相手を見つけやすい特性」は、自分の趣味にあった人間を簡単に見つけられるというもので、FacebookやTwitterなどのレコメンド機能、フォロー機能が該当します。「社会性を構築できる特性」は、特定の相手と現実空間同様の関係性を構築できるというもので、Facebookのメッセージ機能やフレンドをカテゴライズする機能が代表的です。この3つの特性はSNSが作られていく過程で生まれたもので、使用する人間によって良くも悪くもなるため、使い方に留意する必要あるのではないかとC組の皆さんは指摘しました。
■SNSを利用したミーティング

C組では、調査・学習を行なっていく過程でFacebookのグループ機能を利用し、課外時間にネット上でのミーティングも行なってきました。そこでの実体験を元に、SNSを利用したミーティングについて報告が行われました。
C組の皆さんにとって、Facebookは様々なメリットを享受できる革命的なツールだったといいます。現実世界で授業中に討論を行えば、一人ずつ挙手して発言を行わないといけないため議論に時間がかかり皆が意見を言えないという欠点がありますが、FacebookなどのSNSを利用することで、複数人が同時に発言することが可能になります。さらに、授業中に発言することが苦手な人でも、ネット上であれば発言できたり、発言の代わりに「いいね!」ボタンを押すことで意思表示を行うことも可能です。さらに、情報やファイルのシェアも簡単に行えるなど、SNSの利点は多岐に渡ります。ただしデメリットとして、生徒の間でタイピングの速度にバラつきがあり、一部の生徒が議論の速さについていけないなどの問題も発生したそうです。ただ、ディスカッションを重ねるうちに、そういった声は減っていったことから、これはユーザー個人の慣れや使いこなしの問題なのかもしれないとのことでした。
SNSを使用していく中で、他のコミュニケーションツールとの違いも明らかになってきました。沢山の人間が一度にコミュニケーションを取れるツールとして、ケータイメールの一斉送信機能がありますが、これは送信者が選んだ特定の人間にしか情報を発信できません。それに対して、SNSでは一人の発言者に対して関わるのは周囲の自由になっています。大勢の人が自らの意志で自由に参加できるというのは、SNSの新規性であり他のツールには見られないのではないかとC組の皆さんは語っていました。
■発表まとめ
これまでの発表のまとめとして、最初はSNSにネガティブなイメージを抱いていた自分たちが調査・学習を進めていく中で、SNSは人と人とを繋げるツールであり、正しく理解し適正に使用しなければならないことを理解できた。そしてSNSには、マナー・モラルの尊守やSNSの特性に合わせた利用など自分たちで解決していく問題と、SNS自体のテクノロジーで解決すべき問題の2つがあるのではないかとして、C組の皆さんは発表を締めくくりました。
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■発表に対するコメント・質問
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以上の発表を受け、コメンテーターである豊川地域ポータルサイト「みてみン!」管理人の松原圭氏と名古屋大学准教授の金相美氏がコメント・質問を行いました。松原氏は、C組の発表を称賛した上で、発表の中で話題になった地域SNS独自の機能として、自身が管理する「みてみン!」に実装されている学校の連絡網機能を紹介しました。
金氏からは「Facebookを通じて新しい友だちはできたか?」という質問がC組の皆さんに対して投げかけられました。それに対して「自分と同じ趣味を持つ姉の友人とフレンドになりDVDの貸し借りをしている」「Facebookのグループ機能を利用して見ず知らずの大人たちと政治や環境問題に関する討論をしている」「そもそもFacebookをあまり信用していない」などのユニークな回答が寄せられました。
コーディネーターの庄司からも「もし学校がSNSを利用するとしたらどう活用して欲しいか?」という質問がなされ、「SNSを全校生徒が意見を投稿し話し合う場として利用したい」「自分たちの調査・学習の取り組みを宣伝・発表し、他校の生徒や学外の人たちと討論する場としてSNSを利用してはどうか」などの意見が出ました。
分科会の最後に、会場に来ていた参加者たちからも発表に対する感想や質問が投げかけられました。「この時代に生まれてよかったか?」「将来どんな技術があったらいいと思うか?」「高校に進学しても自分たちはFacebookを利用し続けるか?」などの質問に対して、発表を行ったC組の一人ひとりが思い思いの回答を行なっていました。