「ふるさと納税」と地域社会

 居住地以外の自治体に寄付をすると、その自治体の特産品などがもらえるうえ、居住地自治体に納める税金が安くなる「ふるさと納税」。
 平成26年度の寄付総額は全国でおよそ142億円にのぼり、開始された21年度の2倍近くになっています。

 しかし、最近では返礼品の内容によって寄付先が選ばれる傾向が強まり、そのために自治体側も返礼品の趣向を凝らし、競って豪華なものを用意したり、返礼品が転売されるというあり方に批判も出てきています。
 豪華すぎる返礼品は、人気の和牛や高級フルーツなどのほか、なんと家電や土地、「一日市長になる権利」まであります。

こうした状況を「寄附という本来の趣旨に反している」とみて、管轄する総務省は4月1日、(1)商品券や電子マネーなどお金と同じような使い方をするもの、(2)電子機器や貴金属、ゴルフ用品、自転車など資産としての価値が高いもの、(3)寄付額に対して高すぎるもの、などを自粛するよう通知を出して「良識ある対応」を求めました。
こうした通知は昨年に続き2度目ですが、強制力はありません。
地元の温泉の利用券や、町内にある工場で製造されたパソコンなどを「地域の特産品」としてPRしたい自治体の思惑もあります。

 一方、東京・大阪・愛知を中心とする大都市圏では、そこに住む住民が他地域に「ふるさと納税」をした還付金の支払いや控除をしなければならないため減収となり、公共サービスに支障をきたしかねない事例もあります。
 寄付をする人の居住地自治体も、寄付先の自治体も、場合によってはむしろ赤字になるケースもありますが、少しでも収入が増えるのならばやらないよりはと、様々な返礼品が打ち出されています。

 また、自治体が地域の特産品を買い上げることは、本当に地場産業の活性化につながっているのか、特定企業との癒着にならないのかとも指摘されています。
返礼品を贈られた人に、次は町に来てもらったり商品を買ってもらうということは、実際には少ないようです。

ふるさと納税

 本末転倒のような状況になりつつある「ふるさと納税」ですが、本来はお得な特産品を得られるサービスではなく、地方創生が目的で、寄付金の使い道を指定できるものもあります。

 埼玉県宮代町では、町政の予算を町のウェブサイトで公開していますが、その中では「寄付による財源」からの金額が明示されています。
さらに、寄付を募集している事業では各事業担当者が顔写真付きで事業のアピールを掲載し、だれでも自分が応援したい事業への寄付をネットから申し込むことができます。
募集終了後には、もちろん地元名産のお米やお菓子の返礼品が送られ、さらに集まった寄付金額と事業報告が掲載されています。

 事業担当者の想いに直にふれることができ、さらに町の内外から寄せられた寄付金と税金の使途を明確にしようとするこの取り組みは、地域社会の活性化という「ふるさと納税」の本来の目的が生きています。

■参考URL
「返礼品(特産品)送付への対応についての総務大臣通知」(2016/4/1)
「平成25年中(1月1日~12月31日)のふるさと納税(寄附)に係る寄附金税額控除の適用状況について」(総務省)
「相州牛からニュースキャスターまで特典競争が過熱 今や本末転倒に陥った「ふるさと納税制度」の悲鳴」(ダイヤモンドオンライン、2014/12/2)
「ふるさと納税、勝ち組・負け組 町税超す収入、都心は…」(朝日新聞、2015/5/11)
「ふるさと納税ブームに潜む地方衰退の「罠」」(東洋経済オンライン、2015/12/9)
「ふるさと納税自粛通知 自治体「返礼品続けます」(読売新聞、2016/4/2)
「私たちの予算書」(埼玉県宮代町)