『シェアリングシティと政府の役割』① シェアとは何か

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『行政&情報システム』誌に掲載された地域SNS研究会事務局の庄司昌彦(国際大学GLOCOM准教授)によるコラム「シェアリングシティと政府の役割」を、3回にわたって掲載いたします。
第1回はシェアとは何か、またその普及の展開についてです。

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「シェア」の浸透とシェアリングシティ

本連載の第22回(2014年12月号)では、「シェアエコノミーに行政はどう関わればよいか」と題し、「シェア」という価値観に基づいたサービス等の登場と、その普及が社会に与える影響の意味などを紹介した。
その上で、こうした社会的潮流と行政の関わり方として、「シェアリングシティ」という考え方を紹介し、「保有する公共資源の稼働状況を把握し稼働率を高めることで人やお金を動かし、人々のニーズを満たしたり楽しさを生み出したりすること」、「シェアリングエコノミーの浸透を想定した生活様式や社会システムの見直しが求められていくこと」などを指摘した。

シェアリングエコノミーはその後さらに経済社会に浸透し、規制改革のテーマとして本格的に議論されるようにもなっている。そこで、今回は改めてシェアリングエコノミーと行政情報化の接点としての「シェアリングシティ」政策に注目し、ソウル市の事例の詳細と他都市の事例を紹介しながら、考察を深めることとしたい。

まず、シェアリングエコノミーについて定義を確認する。2015年の総務省「情報通信白書」は「典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる」している。
筆者は「『どこに、何が、どれだけ、どんな状態であるのか』といったモノ(無形のものを含む)に関する情報が、主にインターネットなどを介して共有され、人のニーズとのマッチングが高度化することで、従来は個人だけで使用されていたモノが、複数の人によってより有効に活用されるようになること」と定義している。
2つの説明に共通するのは、個人の資産を共有したり貸し借りしたりすることで有効活用すること、ITサービスがその高度化を支えているということである。シェアをする対象は、モノや空間、お金、スキルなど、取引可能なあらゆるものに広がっている。こうして様々なサービスが生まれてきた背景には、経済成長の鈍化や、環境への配慮等の価値観の変化、ソーシャルメディアやスマートフォン、センサー機器の普及などがある。

>>第2回「『シェアリングシティと政府の役割』② シェアリングシティ・ソウル」
    第3回「『シェアリングシティと政府の役割』③ サンフランシスコ、アムステルダム、ミラン、そして日本」