日本国内で検討進むシェアリングエコノミー

tokyo-tower-825196_640これまでソウルやアムステルダム、サンフランシスコなどの海外におけるシェアリングエコノミーの現状をお伝えしてきました。
日本ではまだ準備段階にありますが、9月14日、政府は国内のシェアリングエコノミー事業者が順守すべき指針の案を発表しました。

「シェアビジネス、安心を確保 業界横断ルール、政府が骨格案 身分証提示や保険義務化」日本経済新聞、2016年09月14日)

今回は、これまでの国内におけるシェアリングエコノミーの現状を、政府の審議過程を中心に振り返ります。

2014年に日本に進出したAirbnbで宿泊した訪日外国人は2015年の1年間で138万人以上にのぼり、その経済効果は5,207億円と発表されています。しかしその一方で、集合住宅での近所迷惑や業者による違法な営業などにより、Airbnbは浸透と同時にさまざまな問題によっても認知されるようになりました。
また、時間単位で場所の貸出しをするSpacemarketや、ちょっとした仕事をシェアするエニタイムズ、子育てシェアのAsmamaなど、国内でも新しいビジネスが始まりつつありました。

首相官邸のIT戦略本部はこれらに対応するため、「ITの利活用に関する制度整備検討会」を設置し、2015年10月から第Ⅰ期検討会を行い、シェアリングサービスの仲介事業者に対するルール整備の基本方針を検討してきました。
ここでは、Airbnbや国内シェアリング企業へのヒアリングが行われ、12月までに取りまとめて公開し、意見公募が行われました。議論されたのは以下のような点です。

  1. サービス提供及び利用状況の実態把握が困難⇒事業者に対し、サービス提供者(民泊でいえばホスト)、利用者(同ゲスト)の本人確認を義務付ける。
  2. 情報の非対称性の発生⇒旅館業法、道路運送法などの各業法による許可や衛生基準を満たしているかなどを明示することを義務付ける。
  3. 外部不経済の発生⇒地域社会の安心・安全を侵しかねないということ。トラブルや犯罪があった際にサービス事業者・提供者・利用者のそれぞれがどこまで責任を持つのかを明らかにし、苦情申し立て・相談窓口の設置などを義務付ける。
  4. ボーダレスな対応が必要⇒海外に本拠地を置く事業者にも規制を適用する枠組み作り。

他にも、利用者同士の相互評価の仕組みや、違反等の届け出の仕組みの必要性といった意見もありました。

これらの結果を受けて今年2月から行われた第二期検討会では、従来の業界や地域を保護するために規制の対象とするだけではなく、アベノミクスが掲げる地方創生や一億総活躍社会に資することを基本方針とし、第Ⅰ期検討会の検討事項を元とした民間団体の自主的なルール作りを支援することになりました。

今年5月の「世界最先端IT国家創造宣言」や6月の「『日本再興戦略』改訂2016」でも、シェアリングエコノミーを推進し、ITサービスを活用したCtoCの新しいビジネスを創出し、潜在需要を掘り起こすとともに、観光立国、地方創生を推進する方向性が明確になっています。

こうした方針の下、内閣官房は経済産業省・日本シェアリングエコノミー協会(以下、協会)とともに、7月、シェアリングエコノミー検討会議を設置しました。
協会は2015年12月、国内のシェアリングエコノミー関連会社や金融・通信企業等によって設立された団体です。

検討会議は8月末時点ですでに第4回まで開催されており、EUなどの現状や規制、国内シェアリング企業の実例、地方自治体の取組みなどを紹介しながら、国内でのルールのあり方を検討してきました。

そして9月14日、第5回検討会議で政府と協会が指針案の大筋合意に達しました。

ポイントは以下の5点です。

  1. 本人確認 サービスの提供者・利用者ともに運転免許証等で本人確認を徹底。
  2. 事前面談 育児代行などは、利用者が提供者に事前に会い、信頼性等を確認。
  3. 事後採点 相互評価の仕組みを導入。
  4. トラブル対応 相談窓口の設置、事業者による保険加入。
  5. 情報漏えいの防止 クレジットカード情報等の個人情報の取り扱いの注意。

基本的には第Ⅰ期検討会からの論点を引き継いでおり、サービスごとに適用される範囲も異なるようです。

また、民泊については政府が個別の新法制定を検討していたり、育児やクラウドファンディング、自治体が事業者となる場合等、シェアリングサービスのすそ野は非常に広いため、共通のガイドラインとしてこの指針が共有され、法整備は個別的に進められるようです。