トークセッション「世界のシェアリングシティ―アムステルダム・ソウルと先進事例の紹介」に登壇

talk1

11月25日に行われた「シェア経済サミット」のトークセッション「世界のシェアリングシティ―アムステルダム・ソウルと先進事例の紹介」に、地域SNS研究会事務局庄司昌彦(国際大学GLOCOM准教授)が登壇しました。

セッションの登壇者は、司会の経済産業省商務情報政策審議官・前田泰宏氏、「アムステルダム・シェアリングシティ」プロジェクトを推進するShareNL共同設立者のハーマン・ファン・スプラン氏、「シェアリングシティ・ソウル」の中核であるソウル市イノベーション局局長の全烋寬氏です。

ファン・スプラン氏と全氏は、世界のシェアリングシティを牽引するそれぞれの都市での取り組みについて講演しました。
アムステルダムでは、これまでにこのブログでも紹介したツールシェアの「Peerby」のほか、市内を流れる運河のボート、自動運転による流通、3Dプリンタ、スキルシェア、さらにはKLM航空とAirbnbの協力による古い機体でのホームシェアなどの事例が紹介されました。珍しい取り組みである介護のシェアでは、需要よりもオファーのほうが多いそうです。

talk2

国やEUとの連携も重要で、市によるアクションプランの「シェアリングエコノミーとは、規制や認可という問題ではなく、監視やチャンスをつかむという話なのだ」という言葉を引用し、今後も自治体と安全面などでのすり合わせを行っていくとのことです。

世界初のシェアリングシティであるソウルについては、全氏によると、市が認定するシェアリング企業に対する補助金は82社に84万7000ドル、市内の区を通して160のプロジェクトに93万7000ドルが提供され、シェアリングエコノミーは全市的に広がっています。
そのほかにも学校教育での取り組みやシェアリングエコノミーに関するカンファレンスなども行われています。

talk3

これらはほかのスタートアップ企業よりも収益性が高いそうです。というのも、これらの事業内容が持続可能性が高く、格差にあえぐ若者の未来を開くととらえられているからです。

庄司が指摘したのはシェアリングシティの立ち上げに必要なローカル・ガバメントの役割です。

ファン・スプラン氏は、その役割とはまず都市の課題を明らかにしてそれに対するビジョンを示し、その工程を定めることだといいます。都市の問題に対して様々なアイデアを様々な企業が試す場を提供することだということです。

全氏は、まずソウルという市で始まったことは、より市民とその課題に近かったというメリットがあったと指摘します。市民や市民団体とのつながりが強い市内の区を通じて、地域の問題をシェアし、協働で解決にあたることができたのです。
韓国では国内でも広がり始めており、今月、7つの市と区でシェアリングシティ推進の共同宣言が発表されています。

talk4

Peer-to-Peerという市民間での取引きであるシェアリングエコノミーの利用において、トラブルが起きた場合にはどうするのか、というのは最も懸念される点です。

それについては、ファン・スプラン氏、全氏はともに、「まずはやってみること、その過程で対話し協力すること」が必要だと言います。それによってビジネスモデルを作り、場合によっては国や行政を巻き込んだコミッションをつくることで変化を軌道に乗せることが重要です。
ファン・スプラン氏は「政府は現在の構造にチャレンジする権利を与えるべきだ。ただしモニターをすること。規制ではない」と述べていました。