広がる中国の「食」シェアサービス

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 日本で「食」をシェアする、と聞くと食べログのような美味しいレストランの共有や、クックパッドのような家庭でも簡単に作れる料理のレシピ投稿など、情報のシェアに特化したサービスが広く普及しました。最近では、Ubereatsのような人気レストランの料理を注文・配送できるサービス登場し、人気グルメをより気軽に楽しめるようになりました。

 中国では、《料理する人》と《食べたい人》のマッチングサービスが急成長しています。代表的なものを挙げると「好厨师(hao chushi)」や「爱大厨(ai da chu)」があります。「好厨师(hao chushi)」(提供は上海乐快信息技术有限公司)は、自分の気に入ったシェフに予約を入れると、シェフが実際に自宅に来て料理を作ってくれます。食材や食器は、家にあるものなどを使います。家族の特別な記念日などに、自宅にいながらレストランの美味しいコース料理を楽しめたり、共働きの忙しい家庭では、食事の用意をシェフに任せて家族の時間を確保したりできます。空き時間を有効活用でき収入を増やせることや、普段自分がお店で提供しているメニュー以外の様々な料理をクライアントにふるまえる楽しさなど、シェフ側にも様々なメリットがあります。

 シェフのマッチングサービスについては、日本でもプライムシェフマイシェフが、同様のサービスとして展開されています。日本ではこれらのサービスが、家族の記念日だけでなく、ママ友会や女子会のシーンでも利用されています。

 一方で、「回家吃飯(hui jia chi fan)」(提供は北京加双筷子科技有限公司)は、家庭料理をコンセプトにしたサービスを提供しています。料理の得意なユーザーが、自分の自慢料理の写真や値段などを公開し、希望者が配達先や時間を入力して注文すると、料理が実際に配送されるというものです。従来の出前アプリと違い、個人が作る家庭料理や郷土料理を手頃な価格で楽しめます。同サービスにはAlipayやTencentの電子決済サービスに対応しており、料理をしない一人暮らしの若者などを中心に利用者が増えています。しかし、回家吃飯では主婦などの一般人でも料理提供者として登録できるため、衛生面のリスクが不透明とも指摘されています。企業側は、登録できるのは保険料を支払い事前審査を通過した人に限定するとし、食あたりなどに備えた補償をつけるなどの対策を施しています。

 近年、中国の都市部では、共働きの家庭が増え、家事を中心に外部委託する動きが高まっています。また家賃の高騰も激しく、特に若者は他人と資源をシェアすることにあまり抵抗感がありません。また中国では、食の安全に対する意識も高まっており、外の飲食店よりも、食事提供者の顔が見えて評判がわかる、こうしたマッチングサービスの方が安全性へのニーズに応えているようです。こうした社会的背景もあり、中国における食分野のシェアリングエコノミーサービスは、従来の出前やケータリングにとどまらない、多様なニーズに応えてくれるサービスとして、急速に浸透しました。

【参考文献】