地域活性化とクラウドファンディング

Photo credit: Rocío Lara via Foter.com / CC BY-SA

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クラウドファンディングとは

地域を活性化するために製品やイベント、建物に関するプロジェクトを立ち上げたいと考え、アイデアやスキル、人材をそろえても、場合によっては実現するための資金のめどが立たないということがあります。最近では、そうした場合にクラウドファンディングを活用して資金を調達することが行われるようになってきました。クラウドファンディングとは、インターネット上で、大衆(Crowd)からインターネット上で出資を集めて(Funding)プロジェクトのための資金を調達するというものです。クラウドファンディングでは、地域活性化のためのものの他にも、芸術作品をつくるためのもの、デジタルガジェットをつくるためものなど様々なプロジェクトがあります。

日本政府の取り組み

クラウドファンディングによる地域活性化の可能性については、日本政府も注目しています。内閣府地方創生推進事務局は、「地域資源の活用やブランド化など、地方創生等の地域活性化に資する取り組みを支えるさまざまな事業に対する小口投資」で、かつ「地域の自治体や地域づくり団体の活動と調和が図られたもの」を「ふるさと投資」と呼んでおり、2015年5月にその手引書が制作されました。手引書の中では、ふるさと投資の手段の一つとしてクラウドファンディングを挙げています。「ふるさと投資」では、一般的なクラウドファンディングの関わり方である事業者(プロジェクト運営者)と個人(支援者)、仲介事業者(クラウドファンディング運営元)のかかわりに加え、地方公共団体がPRや仲介事業者紹介、組成支援などを行ったり、地域金融機関が仲介事業者紹介や事業計画策定支援などの形でかかわることが追加され、より地域経済を重視した概念となっています。

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内閣府地方創生推進事務局 「ふるさと投資」連絡会議による「「ふるさと投資」の手引き」より引用

2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、ベンチャー投資や再チャレンジ投資の促進のため、資金調達の一手段としてクラウドファンディングについて検討することが決定されました。そして2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」においても、創業支援の一手段としてクラウドファンディングが言及されています。

クラウドファンディングのメリットとデメリット

クラウドファンディングを利用することで、プロジェクトを立ち上げて出資を受け付ける側にも、出資者側にもさまざまなメリットがあります。まず出資を受け付ける側のメリットとしては、銀行や株主、行政による助成金以外の資金調達ルートが確保できます。プロジェクトによっては、運営組織を非営利団体にせざるを得ず、銀行から融資を受けるのが難しいケースがありましたが、クラウドファンディングによる資金調達であれば銀行の審査より緩いクラウドファンディングの運営元による審査のみでプロジェクトを始めることが可能です。資金調達中には、SNSでそのプロジェクトについてシェアすることで、プロジェクトの知名度を上げたり、より多くの出資金を集めるための宣伝にもなったりするというメリットもあります。出資者側のメリットとしては、プロジェクトの種類によってはプロジェクトにちなんだリターン(お返し)が得られたり、事業の利回りや株式を得る可能性があること、少額から出資を行うことが可能であるということがあります。「地域活性化に貢献したいけど、することが見つからない」という人も資金面で貢献できます。

クラウドファンディングには、このようにメリットもありますが、デメリットもあります。プロジェクト側のデメリットとしては、出資金額が確定すると、クラウドファンディングのサイトの運営者に集まった出資金の5~20%程度(後述の「購入型」の場合)が手数料として差し引かれ、出資額の全額をプロジェクトに充てられないということが挙げられます。加えて、プロジェクトを始める前の資金を集める際にアイデアを広く一般に明らかにしなくてはならないのもデメリットと言えるでしょう。出資側のデメリットは、プロジェクトが目標額に届いてプロジェクトが達成しても、必ずしもその見返りが予定日時までに届くとは限らなかったり、プロジェクトが途中で失敗してしまうとそもそも届かなかったりする可能性があります。「購入」とは異なり「出資」であることをきちんと理解しておく必要があります。

クラウドファンディングの種類

「ふるさと投資」連絡会議『「ふるさと投資」の手引き』を参考に作成

「ふるさと投資」連絡会議『「ふるさと投資」の手引き』を参考に作成

クラウドファンディングは、そのサイトやプロジェクトごとにいくつかの分類に分けられます。分類の仕方は、文献により異なりますが、ここでは内閣府地方創生推進事務局の「ふるさと投資」連絡会議事務局が作成した分類の仕方にならって5種類に分類します。

まずは「購入型」です。「購入型」はその中でも「All or nothing」と「All in」に分けられます。「All or nothing」は支援者がプロジェクトへ出資し、出資受付期間内に出資の合計額が目標額を達成することでプロジェクトが成功した場合、出資者は出資のリターン(お返し)としてプロジェクトに由来する物品(その地域の特産品)やサービス(プロジェクトによって建てられた施設利用権など)を得られる権利をもらえます。また、随時プロジェクトの進捗状況をウェブサイト上で確認できます。これをきっかけに支援者とプロジェクトの運営者に交流が生まれ、プロジェクトの運営者と出資者がプロジェクトを一緒に作り上げていく感覚が得られることも期待できます。万一、出資合計額が目標額に到達せず、プロジェクトが成功しなかった場合、出資金は決済されず、出資者へ返金されます。一方で「All in」は出資額の合計が目標額に達しなくても出資金は決済されます。これらは、あくまで出資であり商店で物を「購入」することとは異なるのですが、後述する「寄付型」と区別する意味で「購入型」と呼ばれています。国内のクラウドファンディングの多くのプロジェクトはこの形式で運用されています。例えば、美濃地域で奉納刀を制作するプロジェクトでは、達成率820%となる4,12万円の出資を集めることに成功しました。

蛍丸伝説をもう一度!大太刀復元奉納プロジェクト始動! – FAAVO美濃國
https://faavo.jp/minonokuni/project/839

次に「寄付型」です。「寄付型」は、ウェブサイト上であくまで寄付のみを受け付けているものです。上記の「購入型」とは異なり出資者が物品を得られるわけではなく、お礼として寄付者名簿としてプロジェクトが終了後、プロジェクトの公式ウェブサイトなどに出資者の名前が掲載されることが多いようです。また、「購入型」と同じように出資者はウェブサイト上でプロジェクトの進捗状況が受け取れ、よりプロジェクトを身近に感じることが通常の寄付とは異なる点でしょう。例えば地方のバスケットボールチームを立て直すための募金では、161%の達成率となる16万1,299円が集まりました。

高松ファイブアローズを立て直し、瀬戸内を元気にしたい! | ファンドレイジングサイト JapanGiving(ジャパンギビング)
http://japangiving.jp/c/843

以下の3つは投資タイプとも呼ばれ、プロジェクトが進むことで金銭のリターンを期待する分類となっています。

そして「貸付(融資)型」です。「ソーシャルレンディング」とも呼ばれます。「貸付(融資)型」は出資者がプロジェクト運営組織に資金を提供すると、元本と利子(利子のない場合もある)の返済をうけるというものです。出資者には出資先の信用度や行う事業の内容はわかりますが、具体的な組織名などはわからないようになっています。事業用の資金を集める場合によく使われ、事業がうまくいかない場合は、リターンが得られないこともあります。直接地域活性化に結び付くものは少ないのですが、国内ではmaneoなどがソーシャルレンディングサイトとして有名です。

ソーシャルレンディング | maneo(マネオ) | あなたの投資が中小企業をサポート!!
https://www.maneo.jp/

4つ目と5つ目は「投資型」とよばれるもので、金融商品取引法の規制対象となっています。そのうち「ファンド形態」とよばれるものは、出資者が特定の事業に対して資金を提供し、その売上などの成果に応じた配当を受けます。プロジェクトによっては、商品や生産物、サービスを受け取れるものもあります。例えば、プロサッカーチームの支援のためのファンドがあり、ファンドに出資した人にはチケット売上金から分配金を償還されるほか、オリジナルグッズの特典が得られるものがありました。

アンジュヴィオレ広島応援ファンド | クラウドファンディング 開花-KAIKA-
https://www.kaika-cf.jp/products/detail.php?product_id=18

そして、「株式形態」は出資者が上場していない企業の株式に出資して資金を提供し、その配当を受けるというものです。将来的にはキャピタルゲインによる収入も見込みます。2015年5月に金融商品取引法が緩和され、実現可能になりました。こちらは企業に対しての出資となっており、それ自体が直接地域活性化に結び付くものは少ないとみられます。

日本におけるクラウドファンディングは、主に「購入型」、「寄付型」での認知度が高いのですが、支援額で比較すると「貸付型」が他を圧倒する状態となっています。

ICT産業の発展によって、今までは資金の面で実現不可能だと思われていた地域活性化に関するプロジェクトが可能になる可能性が出てきました。個人や小規模な団体でも資金の募集が可能になったことで、これまでなかったようなユニークな地域活性化プロジェクトが登場することに期待したいですね。

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