総務省による、地域活性化のためのクラウドファンディング官民連携事業がはじまる

Photo credit: bryan... via Foter.com / CC BY-SA

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地域活性化のためのプロジェクトを立ち上げるにあたり、その資金を集める手段の一つとしてクラウドファンディングが使われるようになってきたことは以前お伝えしました。そのクラウドファンディングの活用に関連して、2016年4月11日から新たに総務省と民間企業が連携する事業がはじまりましたので紹介します。

今回新たに始まったのは、「ふるさと納税」による寄付金を活用し、「地域おこし協力隊」が地域で起業するためのビジネスプランを支援する「ガバメントクラウドファンディング」のサイトです。もう少し詳しく説明しましょう。

「ふるさと納税」は2008年にはじまった自治体への寄附制度で、個人が2,000円を超える寄附を行った時に住民税の二割程度が還付、控除されます。寄附を行うと、果物や肉など寄附先自治体の名産品がお礼としてもらえることが過去に話題となりました。

また、2014年9月に始まった、政府(自治体)が行うクラウドファンディングを「ガバメントクラウドファンディング」と呼び、出資することでふるさと納税の寄附先として利用できます。プロジェクトのオーナーは地方自治体であり、内容はその地域における地方活性化を目的としたものです。

「地域おこし協力隊」は、都市から地方へ移住して地域おこしに関連する活動を行う人々のことです。総務省が管轄する国のプロジェクトで、2009年に始まりました。2015年度には全国で2,625人が活躍しています。活動内容は受け入れ先の各自治体によって様々となっています。実際に地域おこし協力隊として活躍されている方の記事によると、高齢者の見回りや観光協会の仕事の手伝い、ウェブサイトの手伝いなどを自治体の依頼としてこなし、その他にも自主的な活動を行うようです。「地域おこし協力隊」の任期は1年以上3年以下ですが、任期後もその約6割が同じ地域に定住しており、同一市町村内に定住した隊員のうち約2割の方が起業しています。そうした人々のビジネスプランを支援するために始まったのが今回の官民連携プロジェクトです。民間企業が運営しているふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』はもともとガバメントクラウドファンディングに関する情報を掲載していましたが、今回の連携事業により、地域おこし協力隊およびそのOBの人々が作ったビジネスプランによるクラウドファンディングのプロジェクトも掲載されるようになりました。

ふるさと納税のクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
http://www.furusato-tax.jp/gcf/

最初に掲載されたのは、岡山県真庭市のシェアハウスを開設するプロジェクト、愛媛県西予市の喫茶店を復活させるプロジェクト、高知県越知町のゲストハウスを完成させるプロジェクトの3件です。どのプロジェクトも合計で300万円程度の出資を募っており、出資者は出資額によってオリジナルデザインのてぬぐいやトートバッグ、特産品などのお礼が見込めます。

コスモポリタン田舎づくり!「インターナショナル・シェアハウス ”テ(照)ラス”」開設事業を支援! | ふるさと納税のクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
http://www.furusato-tax.jp/gcf/74

伝統的な建物の保存地区にある「喫茶 春名」をCafé&Barとして復活させたい!! | ふるさと納税のクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
http://www.furusato-tax.jp/gcf/75

標高400mの山奥で“古き良き日本の田舎を感じるゲストハウス”を完成させたい | ふるさと納税のクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
http://www.furusato-tax.jp/gcf/73

地域おこし協力隊は、地域において地域力の維持・強化をはかるための活動を行うものですが、地域おこし協力隊の任期である1~3年だけでは完全にそれらの取り組みが地域に定着するかわかりません。それまで各地域で活動してきた人々がその場所で起業することで、それ以降もずっと地域に根づくことが期待できます。

この事業によって掲載されるプロジェクトは、これまで都市から地方に移り住んでまで地域おこしに取り組んできた、言わばその地域の活性化について知り尽くした人が作成したビジネスプランですので、その地域に広く受け入れられるようなプロジェクトばかりなのではないでしょうか。寄附する側からしても、寄付額がふるさと納税の対象となるという意味では単にクラウドファンディングに参加する以上のメリットがあります。

今回の事業について、地域SNS研究会事務局の庄司昌彦(国際大学GLOCOM准教授)は、「起業時にクラウドファンディングを活用することで、単に広報をするよりも関係の濃い支援者や顧客を募ることが期待されます。一方で、地域起こしにつながる起業ということであれば、地元の金融機関や地元企業などが色々な形で応援することも重要ではないでしょうか。クラウドファンディング一本槍ではなく、複数の資金調達手段を組合せると効果的でしょう」と述べています。

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