位置情報を使ったゲームアプリが地域社会へ与える影響

Photo credit: Hombit via Foter.com / CC BY

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携帯電話やスマートフォンが普及し、GPS機能を搭載した携帯端末を持つ人が増えてきた近年においては、GPSによる位置情報を使ったゲームアプリがたびたび話題となってきました。 例えば、2016年7月6日にアメリカやイギリスで公開された、「Pokémon GO(ポケモンゴー)」は22日に日本で公開される前から国内でも話題となりました。このゲームは位置情報によって異なるキャラクターを集めたり、現実世界に存在する建物によってゲームを有利に進めたりできます。あまりの話題性から、ゲームの配信前に内閣サイバーセキュリティセンターが運営するSNSアカウントから安全に楽しむための注意が公開される事態となりました。

『内閣サイバーセキュリティセンターからポケモントレーナーのみんなへおねがい♪』 href=”https://twitter.com/nisc_forecast/status/755720522546106369″>https://twitter.com/nisc_forecast/status/755720522546106369

携帯端末内で動くアプリケーションであるにもかかわらず、現実世界の地理が影響するというこの分野のゲームの特性を活かして、地域振興や地域活性化につなげようとする動きがあります。今回はこれまでの国内の位置情報を使ったゲームについて紹介します。 まずは日本で携帯電話の位置情報を使ったゲームについて紹介しましょう。中川大地氏によると、スマートフォンが登場する前である2000年ごろに携帯電話向けのコンテンツとして、J-PHONEの基地局からの位置情報を用いたゲーム「クリックトリップ」「誰でもスパイ気分」がリリースされていたそうです。

『位置情報ゲームの展開と『Ingress』(中川大地の現代ゲーム全史)【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.613 ☆:ほぼ日刊惑星開発委員会:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) – ニコニコチャンネル:エンタメ 』 http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/ar1041064

そして携帯端末による位置情報を使ったゲームとして日本国内で代表的なのが株式会社コロプラの「コロニーな生活」です。2005年にサービスが開始され200万人以上という多くのユーザーの支持を得ました。こちらもリリース当初はGPSではなく携帯電話の基地局からの位置情報をもとにゲームを進めます。内容は携帯電話を移動させることで仮想通貨を稼ぎ、仮想空間上につくられた街を繁栄させるというものです。

『コロニーな生活|毎日の移動がゲームになる!「位置ゲー」』 http://pc.colopl.jp/pages/wl/welcome.html

また、ゲーム上で利用できるコレクションアイテム「コロカ」は、提携企業でユーザーが一定以上の金額の商品を購入することでもらうことができます。これを得るために長崎県の観光地巡りをすることを目的とした1泊2日のバスツアーも2009年に行われました。初めてのバスツアーは2回行われ、有田焼のお店や遊覧船クルーズなど現地のお店で参加者一人につき8000円前後の買い物を楽しんだようです。

『観光業界が注目する位置情報ゲーム、「コロプラ」バスツアー 』- ケータイ Watch http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/315649.html

2013年にサービスが開始されたナイアンティック社のゲーム「Ingress」は企業だけではなく行政が観光PR活動に使用したことで話題になりました。「Ingress」は2陣営にわかれ、スマートフォン上に示された実際の地図を歩き回ることで「陣取りゲーム」のようなことをおこなうゲームです。 岩手県は2014年9月に「イングレス活用研究会(現「ゲームノミクス研究会」)」を発足し、観光PR活動に活かしています。ゲームを行う上で必要になる「ポータル」というスポットの多くが観光地となっているため、観光PRに活かせないかと着目したようです。 岩手県は盛岡市内に2時間で回れる3つのコースをつくり、Ingressを楽しみながら観光も行えるようにしました。もともと地域で行われていた祭りとIngressも楽しめる観光イベントを組み合わせ、さらに地元の飲食店や土産物店、交通関係の事業者、学生などと協力してイベントを開催しました。 その結果、そこまで予算をかけることなく20代から30代の若い層を中心に新たな観光客の取組に成功しました。

『岩手県が「イングレス活用研究会」発足-観光PR活用に向け』 – 盛岡経済新聞 http://morioka.keizai.biz/headline/1698/ 『「岩手県」に聞くIngress(イングレス)観光イベント成功のコツ。(熊坂仁美) 』- 個人 – Yahoo!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/kumasakahitomi/20150306-00043444/

同じように2014年12月に神奈川県横須賀市がIngressの特設ページを作成しました。このページでは横須賀市内の観光スポットをめぐりながらIngressを楽しめる情報を掲載しています。また、Ingress利用者向けに横須賀市の無人島「猿島」行フェリーの料金を期間限定で半額にする観光事業を行っていました。

『横須賀市がIngress特設ページ 自治体初 猿島行きフェリーの「Ingress割」も』 – ITmedia ニュース http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1412/18/news088.html

他にもIngressは様々な自治体とのコラボレーションが行われ、様々な手段で観光へ活かそうという試みがあります。前述の自治体以外にも各地域で独自に体験会などを開催しているところもあります。 2014年に公開されたゲーム「ステーションメモリーズ!」は携帯電話の位置情報を用いて鉄道をモチーフとしたキャラクターを集めるというものです。キャラクターは日本全国の鉄道駅を訪問することで得られます。2015年には同様の位置情報ゲーム3本で東北から九州までの全国8地域でイベントを実施、合計で約3万人が参加しました。これによる交通費、宿泊費、飲食費、お土産代などの経済効果は約6.6億円と運営会社は試算しています。

『駅メモ! – ステーションメモリーズ! 』 http://ekimemo.com/

位置情報を基にしたゲームによって、今までリーチできなかった若い人が地方を訪れ、地域の企業の商品を購入するきっかけになる側面があるようです。 次回は、最近リリースされ、世界的に大きな話題となっている『Pokémon GO』と地域社会の関わりについて紹介します。

参考文献