フィンランドにおけるMaaSのはじまりと発展

Photo credit: Foter.com

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前回の記事では、MaaS(Mobility as a Service)についてその概要を紹介しました。今回は、特にMaaSで先進的な国であるフィンランドについて、MaaSのはじまりと発展していった経緯について紹介します。

フィンランドではじまった「MaaS」プロジェクト

もともと、「MaaS」はフィンランドの技術庁(Tekes)と運輸通信省(the Ministry of Transport and Communications)が助成し、世界で初めてとなるモビリティサービスのオープンイノベーションプラットフォームの開発のためにつくられたプロジェクトでした。設立された期日ははっきりとはわかりませんが、Tekesのウェブサイト上には、2014年10月7日に収録された輸送エンジニアのコメントが掲載されていることから、この頃には作られていたとみられます。

Photo credit: anantal via Foter.com / CC BY

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このジョイントプログラムのパイロット版として、特定のユーザーグループのニーズを理解し、それらに適切なドア・ツー・ドア・サービスを作成することを行っていました。このドア・ツー・ドア・サービスは、シームレスでスムーズなモビリティサービスであり、これを実現するためには、時刻表・リアルタイムの位置情報・既存の輸送事業者(鉄道、タクシー、カーシェアリングなど)の支払いシステムといった最新のデジタルソリューションへのオープンアクセスが必要となると述べています。また、このプログラムには、Delta, Elisa Corporation, Ericsson, Goodsign, GoSwift, Helsinki region transport HSL, IQ Payments, Finnish Geospatial Research Institute FGI – National Land Survey, Neocard, OP Financial Group, Ramboll, Secto, Semel, Siemens, Sito, Skedgo, Stratax, Finnish Growth Corridor Network, Corporate Services of the Finnish Taxi Federation (Taksiliiton yrityspalvelu), City of Tampere, Sonera, Uber, Eeraといった組織が参加しており、官民が一緒になって参加していることがわかります。

また、非公開としては2012年頃から、一般公開としては2013年から2015年まで、ヘルシンキで「Kutsuplus」と呼ばれるMaaSの実験が行われました。この「Kutsuplus」は、街中に青い専用のミニバスを走らせておき、人々が出発地・目的地・希望時刻をアプリで指定すると、金額と時刻、乗車地点がアプリで表示され、その時に乗り合わせている人々にとって最も最適なルートでバスが運行されます。料金はバスよりは高いもののタクシーは安く設定されており、運賃は自動的に計算され、アプリで決済されます。

Bloombergの報道によると、このMaaSはアールト大学の修士課程だったSonja Heikkila氏が修士論文として提出したものが実験の元となっているようです。この論文はヘルシンキの都市計画部に委託され、Sonja氏はそこで働いているとのことです。Whimが2016年6月にサービスを開始したことを踏まえると、アプリでバスを呼び出せて運賃をスマホアプリで支払うことのできるこのKutsuplusはMaaSの最初期のサービスの一つと言えるでしょう。

実際にKutsuplusを利用している動画もあります。

 

2015年に「European MaaS Alliance」の結成

ヘルシンキで2014年に開催された「ITS European Congress」では、MaaSのコンセプトが出され、フランスのボルドーで2015年10月に開催された「ITS World Congress」では、「MaaS」プロジェクトの中心メンバーに加え、イギリスやデンマークなどのヨーロッパの組織が「European Mobility-as-a-Service Alliance」を結成しました。具体的な組織名を挙げると、Aalborg University, AustriaTech, Ericsson, ERTICO – ITS Europe, Federation International de l’Automobile (FIA) Region I, Finnish Ministry of Transport and Communications, Helsinki Business Hub, IRU, Connekt, ITS Finland, ITS Sweden, ITS Ukraine, MOBiNET, National Mobile Payment Plc. (Hungary), Swedish Ministry of Enterprise and Innovation, Finnish Funding Agency for Innovation (Tekes), Transport for London, Vinnova, University of Tampere , Xeroxとなり、国境を越えて産官学の組織が参加していることが分かります。

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公式ウェブサイトによると、この組織はMaaSへの共通のアプローチのためのよりどころとなるものを作り、MaaSが成功裏に実施されるために必要とされる規模の経済をアンロックし、MaaSをヨーロッパおよびさらにその外に発展させていくための官民のパートナーシップです。主な目的は、単一の開かれたマーケットとMaaSサービスの完全な導入を促進することです。

2016年企業「MaaS Global」の登場とアプリ「Whim」の開始

2016年2月には企業「MaaS Finland」が始動し、プライベートの投資機関や、フィンランドの技術庁から220万ユーロの資金調達に成功しました。同年6月3日には「MaaS Finland」から「MaaS Global」に社名が変更となり、MaaSをのサービスをヘルシンキで展開する「Whim」のサービスを開始しました。「Whim」は目的地を検索するだけで公共交通機関とライドシェア、タクシー、レンタカー、レンタサイクルなどの組み合わせから最適なものを選べ、運賃を月額制で支払うことのできるMaaSのアプリです。

◆参考サイト

MaaS Global – Mobility as a Service

Mobility as a Service | Tekes

ERTICO MaaS – Mobility as a Service Alliance – ERTICO

世界初のモビリティ・アズ・ア・サービス企業 MaaS Finland | ITS / 情報セキュリティ | 株式会社ガイア・システム・ソリューション

Millennials Want Apps, Not Cars – Bloomberg View

Helsinki’s Uber for Buses Is Stuck in First Gear – Bloomberg

Good News tests: Kutsuplus service – YouTube

あなたの固定観念をぶち壊す! 画期的なバスのシステムKutsuplus – ICHIROYAのブログ