「共用」を進めるスタートアップ企業とコワーキングスペースの進化

Photo credit: tedeytan via Foter.com / CC BY-SA

Photo credit: tedeytan via Foter.com / CC BY-SA

社員が少人数で、その後の社員数の変化も予測されるスタートアップ企業にとって、どこを拠点に仕事をするのかといういうのは大きな懸念点です。そんな中、スタートアップ企業が求める環境を用意するコワーキング企業が近年広がりを見せています。

コワーキングスペースを使うことで、スタートアップ企業は賃貸で事務所を借りるよりも安く労働環境を用意することができます。コワーキングスペースを提供する企業として代表的な存在である「wework」は、世界的な広がりをみせ、おしゃれで遊び心を感じさせる空間を提供するだけでなく、データサイエンティストを雇い、会員にとってよりよい空間へと更新し続けています。これは会員からのフィードバックや会員の属性情報、稼働状況のデータなどを分析するもので、最適な部屋の数やレイアウト、サイズのパターンを導き出しています。こうして得られたデータはデザイナーにフィードバックされるほか、特定の空間づくりがうまく機能していることが判明すれば、その要素をスタンダードな空間に取り入れて次の事業展開へと活かしています。設計やデザインを一手に引き受けているweworkだからこそ、こういった施策が実現可能となっています。

weworkがスタートアップ企業に提供しているのは物理的な空間だけではありません。会員同士が専用のSNS上で連絡を取り、様々な業種が相互に連絡をとれるようにすることで、例えばスタートアップ企業がデザイナーや会計士、フォトグラファーが必要になった時にも融通を利かすことができる仕組みが成立しています。

また、2017年4月にはソフトウェアプラットフォームの「WeWork Services Store」がリリースされました。これは、Webやモバイルからアクセスできる、アプリストアに似たソフトウェアプラットフォームで、成長を続けるスタートアップに必要な様々なサービスの検索、管理、購入のプロセスを合理化し、他会員からのレビューを表示したり、会員に特別オファーを提供したりするものです。現在は、Salesforce、Lyft、Upwork、Zendesk、Xero、Slack、Amazon Web Services、Office 365、Expensifyをはじめとした100以上の企業と提携を組み、財務や人事、マーケティング、プロジェクト管理まで幅広くソフトウェアやサービスを利用可能にしています。TechCrunchによる報道によると、ここで提供されるサービスには独占契約によるものも含まれているそうです。また、weworkでコワーキングスペースを利用する予定がない企業にも、この「Service Store」を利用するための会員区分が新たに新設され、スタートアップをソフトウェアの面で支える役割も始まりました。

weworkは、現在日本でコワーキングスペースの提供を行ってはいませんが、3月にソフトバンクが投資を行い、また東京で「コミュニティマネージャー」の求人を行っていることから、将来的に日本でもサービスを行う可能性がありそうです。

「WeWork Services Store」についてはこちらの動画もご覧ください。

Introducing the WeWork Services Store from WeWork on Vimeo.

weworkはニューヨークで創業されたコワーキングスペースを提供する企業ですが、同様の企業は世界各国にあります。特にベルリンはそのスタートアップ企業の多さから彼らにコワーキングスペースを提供する企業が数多く存在します。例えば、2017年3月にベルリンで新しく設立された「Silicon Allee」は、「スタートアップキャンパス」を提供することを謳います。同社は、最初の資金調達を終えた5,6人くらいの規模のチームでその後の拡大が期待されているスタートアップを対象にしてコワーキングスペースを提供する企業です。社員が増えてより大きなスペースが必要になった場合でも、同じビルの別のスペースに移動するだけで業務が継続できるような仕組みとなっています。現在ベルリンではそのようなフレキシブルなスペースの需要があるにもかかわらず供給があまりないそうです。なお、「Silicon Allee」は将来的にこうした大小さまざまなスタートアップ企業やテクノロジー関連の企業が使えるカフェやラウンジ、イベントスペース、アパートを作る予定で、スタートアップ企業の多様なニーズに応えられるような環境作りを行っていくそうです。

Photo credit: Rolf Brecher via Foter.com / CC BY-SA

Photo credit: Rolf Brecher via Foter.com / CC BY-SA

コワーキングスペースについて、ソーシャルキャピタルを活用して運営している例も見られます。オランダのアムステルダム発祥で2,576地点にコワーキングスペースを持つ「Seats 2 meet」は、オンラインでの予約時にユーザー個人が持つ知識やスキルなどのソーシャルキャピタルを登録します。登録内容は各拠点に置かれた「セレンディピティ・マシーン」に表示され、誰もが閲覧可能となっています。コワーキングスペースを利用するのには基本的な料金を支払う必要はなく、その時利用しているユーザーが他のユーザーにそのソーシャルキャピタルをシェアするのが支払いの代わりとなっています。営業や宣伝部門もユーザーが自発的にその役割を果たすので、運営上のコスト削減にもつながります。マネタイズは会議室使用時に使用座席数に応じて課金され、混雑する時間帯は料金が高くなります。またアムステルダムの拠点では昼ごろにランチが提供され、それにも料金が発生します。コーヒーは無料ですが、コーラなどのソフトドリンクやお菓子については定価が決まっておらず、利用者が正当だと思う金額を支払います。

Photo credit: wuestenigel via Foter.com / CC BY

Photo credit: wuestenigel via Foter.com / CC BY

実はこれらの仕組みは企業・個人・Seats 2 meetのどの方面にもメリットがあります。企業にとってはSeats 2 meetはリサーチの場として有用で、個人にとっても営業活動無しに企業とのパイプを作り、ビジネスチャンスにつながります。企業と個人がつながることで、会議室の利用頻度が増え、Seats 2 meetのマネタイズにもつながります。

また、このSeats 2 meetのコンセプトはアムステルダム郊外のアルメレにある図書館でも活かされています。図書館内にはSeats 2 meet専用エリアが20席設けられており、商業性はなく地域に根差した協業の場として利用されています。

Photo credit: Foter.com

Photo credit: Foter.com

このように、流動性の高いスタートアップ企業が求める環境に様々な仕組みで応えるコワーキングスペースが世界的にみても増加しています。今後も共用できるサービスやシステムが増加し、スタートアップ企業はうまくそれを活用していくと予想されます。

 

参考リンク: