より狭いコミュニティを対象とした、新興地域SNS「Nextdoor」の登場と発展

2010年の519事例をピークに、減少を続けている地域SNSですが、ここ数年でまた新たな動きが見られています。

今回ご紹介する新興地域SNSは、その多くが以前の地域SNSよりもより細かい地域でコミュニティが作られており、かつ実名を登録することを推奨もしくは強制しています。そして多くの場合、投稿内容は検索エンジンの結果に表示されないなど、外部から確認することができなくなっています。

今回は新興の地域SNSでもっとも大規模なアメリカのNextdoorを紹介し、次回は国内の事例をいくつか紹介したうえで、その流行の要因についてもご紹介します。

Nextdoorは2011年10月にアメリカで開設されたご近所SNSです。市町村のレベルをさらに細かくブロック分けしてコミュニティを設けています。実名で登録することを求められるほか、電話番号・クレジットカード・郵便・ご近所さんからの紹介などの手段で本人確認が必要となっています。

本人確認を厳格にし、より細かいコミュニティでSNSを作ることでより実社会上の近隣住民同士の付き合いがしやすいつくりにしています。Nextdoorが作成した紹介ビデオでも、近隣住民同士が梯子や芝刈り機などの貸し借りについてのやり取りを例に挙げているのが確認できます。ほかにも、公式サイトが挙げている例として、信頼できるベビーシッターを探したり、脱走したペット探しに協力してもらったり、塗装の仕事をしている人を探してもらったりすることを想定しているようです。


2016年2月にオランダ、2016年9月にイギリスに進出し、2017年2月にはイギリスの地域SNSであるStreetlifeを買収しました。2011年現在はアメリカ全土で716件だったコミュニティも、2017年6月現在では14万3千以上に成長しています。なお、Nextdoorの公式ブログによると、2016年6月に10万のコミュニティを達成したと明らかにしており、これはアメリカ全土の60%のエリアをしめているとのことです。

2015年のNew York Timesの記事によると、日々利用者間でやりとりされるメッセージは500万件あり、そのうち100万以上が自分の好きなビジネスを薦めるカテゴリへの投稿になっています。さらに、そのうちの約8割が地元の商店や業者に関する情報になっているとのことです。

Nextdoorの公式なユーザー数に関しては公表されていませんが、2016年6月のThe Vergeの報道では、「10万以上のコミュニティに1000万以上のユーザーがおり、アメリカで最も大きいSNSの一つに成長している」と見積もる記事もあります。

また、Google PlayのNextdoorアプリのページを参照すると、Android版アプリのダウンロード数は「100万~500万」との表記もあり、これも実態を把握する一つの参考になりそうです。

2015年に東洋経済が報じた記事によると、現在、Nextdoorはニューヨーク市をはじめとした650もの地方自治体が提携しています。

具体的には、government technologyの報道によればボルチモア警察が犯罪やそのほかの重要な情報を配信するために活用したりサンフランシスコで大規模な火災が発生した際にサンフランシスコ当局が最新情報をNextdoorのアラートを送信したりオースティン警察がNextdoor上で街の安全性に関する世論調査を行うなど、行政サービスを行うためのツールの一つとして活用されています。

実際に、NextdoorのTimes Squareのある地区のページにアクセスすると、コミュニティ内での投稿が垣間見えたり、自治体が広報する内容についても確認することができます。

このNextdoorについて、利用者はどのようにとらえているのでしょうか。Nextdoorの公式ブログによれば、オースティンなどで地域の防犯に良い効果がうまれているとの記事もあります。不審者の目撃情報は、すぐにコミュニティ内の掲示板に報告され、住民のパトロール活動が定期的に行われるようになり住民がNextdoorを介してお互いの防犯意識を高めているとのことです。また、Nextdoorの公式ブログの別の記事によれば、行方不明になってしまった子どもの捜索にNextdoorが貢献した事例もあるとのことです。このときは、事件が判明してすぐに、行方不明になった子どもの近隣住民や地元警察がNextdoorに投稿したことで、その子どもを見たこともない人を含めて近隣の住民たちが一斉に捜索に協力し、この初動の速さのおかげで事件は大事に至らず、子どもは無事保護されたとのことです。

Photo credit: Foter.com

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ほかにも、公式ブログでは、大洪水山火事、停電が発生した際も、現場の状況に基づいて信憑性の高い情報がリアルタイムでシェアされたことで、多くの住民が迅速に避難できたとの事例紹介を行っています。

NewsPicksの記事に書き込まれたコメントでも、米国に住んでいる日本人がNextdoorの使い方について紹介しています。それらによると、ガレージセールの告知、帰省した学生のバイト探し、近隣に生えている毒キノコの注意喚起、ベビーシッター探し、空き巣の情報などの情報がやりとりされているようです。

次回は、国内で近年登場した新興地域SNSについていくつか事例を紹介したうえで、その流行の要因についても紹介します。

参考サイト: