社会起業家とその活動を支援するアクセラレーションプログラム

Photo credit: Simon Blackley via Foter.com / CC BY-ND

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これまで、地域における諸問題を解決のためにクラウドファンディングの機能を搭載したウェブサイト「LOCAL GOOD」や、地域活性化のためのクラウドファンディングにふるさと納税を仕組みを活用できる「ふるさとチョイス」、官民が連携して行政コストを下げる「社会インパクト投資」などを紹介してきました。時代の流れとともに社会貢献のための資金調達の手段が多様化してきているといえます。

行政にはできない社会的課題への対応として、ビジネスの手法を取り入れて取り組む活動は、「ソーシャルビジネス」もしくは「コミュニティビジネス」と呼ばれます。

経済産業省によると、「ソーシャルビジネス」の定義は、以下の3つの特性をそなえるものとされています。

  1. 社会性:現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること
  2. 事業性:1のようなミッションにビジネスの手法で取り組み、継続的に事業活動を進めていくこと
  3. 革新性:新しい社会的商品・サービスやそれを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること

「ソーシャルビジネス」を支援 社会的課題にビジネスの手法で取り組む人を後押し:政府広報オンライン
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201410/3.html

一般企業と異なるところは、事業の目的が「利益の追求」ではなく「社会的課題の解決」にあるということです。

経済産業省は、ソーシャルビジネスの事業分野として、地域社会における環境保護、高齢者・障害者の介護・福祉、子育て支援、まちづくり、観光などを例にあげています。ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスが推進されることによって、行政コストの削減をはじめ、地域における企業や雇用の創出などによる地域活性化につなげることが期待されています。

そして、NPOや株式会社の立ち上げによってソーシャルビジネスを新たに起こす人々は「社会起業家」と呼ばれています。地域経済が停滞する中、社会起業家の存在がこれからの地域経済にとって少なからず重要になってくるのかもしれません。

新たにNPOや株式会社を立ち上げるにあたり、すでにノウハウを獲得して共有してくれる人、資金面で協力してくれる人、行政の人など様々な立場にある人と接点を結ぶことが必要になってくると予想できます。そのような時には起業を支援するアクセラレーションプログラムが役立つ可能性があります。

そういった組織のひとつとして「SUSANOO」があります。SUSANOOは、これまでにも多数の社会起業家を排出してきたNPO組織ETIC.と、ガンホー創業者であるなど著名な起業家である孫泰蔵氏が関わって2014年4月に創設されました。従来の企業では事業を構築することが困難とされてきた分野にあえて挑戦する革新的なビジネスモデルを構築し、ベンチャー企業起業家や企業、行政、メディアの人々と交流をしながら実現を目指すアクセラレーションプログラムです。

プロジェクト内でエンジェルやスポンサー、メンター、エキスパート、コネクターなどさまざまなステークホルダーと交流を続けていく中で、寄付や協賛を受けたり、事業連携などを結ぶことも期待でき、創業時の資金調達に期待できます。もちろん資金以外にも、交流の中で得られる人脈やノウハウ、経営に関する知識も社会起業家にとって貴重な財産になるといえるでしょう。

こうして、SUSANOOの支援を受けているソーシャルスタートアップ(社会起業家)は現在確認できるだけで42あります。

例えば、市民が主体となり、テクノロジーを活用した地域課題解決を支援するコミュニティである「Code for Japan」、地域の外から祭りへの参加を通じて、地域の理解を深め、新たなつながりを創るツーリズムを提案する「Ma-tourism」、地域の高校生に地元の魅力に気づく・形にする・伝えるといったイノベーション教育プログラムを提供する「i.club」などがあります。これまでに支援を受けている企業の一覧はこちらのページを参照ください。

SUSANOOによると、SUSANOOはそこで生まれたソーシャルスタートアップが成功して世の中の憧れの存在となり、次の挑戦者を支える側に回って貢献するというエコシステムをつくり上げることを目指しているそうです。

なお、SUSANOOの他にも、社会起業家を育てるアクセラレーションプログラムはいくつかあります。

「SE Outreach Accelerator」は、ストックホルムに本部があるソーシャルビジネスの事業化をサポートする専門プログラムで、スウェーデン国際開発協力庁と非営利団体によって毎年開催されています。社会起業家に対し様々な手法を組み合わせたプログラムを行い、起業家のアイデアをもとに社会的課題の解決を図りながら経済的にも自立をするソーシャルビジネスを育成しています。

「ソーシャルビジネスの事業化をサポートする専門プログラム「SE Outreach Accelerator」が今年もストックホルムで開講」
http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43301

また、の「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)」は社会起業家に対して資金やスキルを援助し、また外部の人材との接点となります。この団体も資金を出すだけではなく社会起業家とともに2年間協働します。

「“前に出ないリーダーシップ”がもたらすものとは? SVP東京代表・岡本拓也さんに聞く「コラボレーションを生み出す秘訣」」
http://greenz.jp/2015/01/14/svp_takuyaokamoto/

いずれのアクセラレーションプログラムも、資金面での協力はもちろんですが、関係者が持っているスキルや人脈、知識などをこれから社会起業を行う人達に授ける場としての価値が高いようです。

「SUSANOO」は2014年に、そして「SE Outreach Accelerator」は2012年にそれぞれはじまった、まだ比較的新しいプログラムです。これらの仕組みを使った社会起業家がソーシャルビジネスを成功させ、新しい循環を創ることで近い将来に地域経済に良い影響をもたらすことに期待します。

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